駄作製造機

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【愛があればなんでもできる?】

プルルルル

それは、深夜の2時を過ぎた頃だったと思う。

夏の熱帯夜、俺は寝付けずにネット徘徊をしていた。

そんな時だった。

非通知で驚いたが、深夜テンションで気が狂っていたのか、イタズラだと頭の中では理解していた。

ピッ

『も、、もしもし、』

満を持して電話に出た。

『、助けて、僕、桂馬。』

それは長年苦楽を共にしたが最近連絡をとっていない親友だった。

『桂馬?!どうした?』

どうやら泣いている様子の親友。

幼稚園の頃から一緒だったからか、親友が困っているとどうしても放って置けない。

『人、、埋めるの手伝って。』

は、、?

声も出なかった。

外では雨が降っているのか、その雨音がやけに近くで聞こえてくる。

『ひ、、と?』

ようやく絞り出した声は女性のように高かった。

『来て、、いつもの場所、待ってる。』

桂馬はそれだけ言うと電話を切った。

いつもの場所、、

俺と桂馬が遊ぶ時はいつもその場所で待ち合わせをしていた。

即座に財布とダウンを羽織り車のキーと傘を掴んで外に飛び出した。

いつもの公園には、雨でびしょ濡れになった桂馬が立ち尽くしていた。

『け、、桂馬、』

止まった車に乗り込んできた桂馬に声をかける。

『流風、、僕、どうしよ、、』

手はワナワナと震え、自分でも抑えが効かないようだ。

『とりあえず、落ち着こうぜ。な?』

ビニール袋をそっと桂馬に渡す。

桂馬の元へ急ぐ途中、コンビニに寄って桂馬の好きなココアクリームパンとバナナオレを買っておいたのだ。

桂馬はそれを見て泣いていた。

俺は少しだけ安心して、車を発進させた。

桂馬から詳細を聞き、俺は本日2度目驚いた。

桂馬が殺してしまったのは桂馬の兄、慶太だった。

桂馬の兄はどうしようもないクズ人間で、昔から桂馬に暴力を振るっていた。

そればかりか、桂馬の彼女を騙し、金銭を奪い取っていたのだ。

それが発覚し、桂馬は兄を問い詰めたが、兄はしらばっくれるどころか逆ギレしたのだそうだ。

そして桂馬や彼女を罵り、それに怒った桂馬は衝動的に兄を撲殺した、、と。

『桂馬、、その、お兄さんの死体は?』

桂馬は俯き黙ったまま。

俺は聞くのはまだ早かったか、、と思っていたら、急に桂馬が口を開いた。

『流風、、流風はさ、愛があればなんでもできるか?』

顔を上げた桂馬の目には、俺は映っていなかった。

『え、、それは、TPOにもよる、、だろ?』

『なぁ、質問に答えろよ。流風。』

虚な目で俺を見つめる桂馬。

恐ろしいとも思ったけれど、そんな桂馬を綺麗だとも思っている俺もいた。

桂馬にこんな感情が芽生えたのは、多分中学3年生の時だったと思う。

桂馬は優しく誠実で、柔和な顔が綺麗だった。

そう思っていたのは俺だけではなかったようで、桂馬はよくモテていた。

桂馬のことをよく知らない奴らの中でヘラヘラと愛想を振り撒いている桂馬を見た時、自分の心の中で渦巻く嫌な感情があった。

そこからどんどん桂馬に対しての恋情が芽生えた。

それは今でも。

今でも桂馬が好きだ。

でも、そんな自分のキモい感情を蓋をして、縁を切るつもりで連絡を絶ったのに桂馬は俺を追ってきてくれた。

『ああ。何でもできる。だから、安心しろ。』

桂馬の濡れて湿っている頭を優しく撫でた。

桂馬は安心したように柔らかく笑い、瞳にやっと俺を映してくれた。

俺は桂馬の秘密の片棒を、一生背負うつもりだ。

俺は、愛のためならなんだってできるさ。

5/16/2024, 10:52:09 AM