長い箸は掴むのが難しい。僕は、初めて人の骨を持ち上げた。少し前まで身長を競って、足の速さを競って、スマブラを競っていた相手の骨を持ち上げた。僕より少しだけ背の高かった隣の家の一個差のお兄ちゃんは今はもう誰かの両手に収まるくらいの大きさになってしまっている。
泣き崩れたおばちゃんの顔はぐしゃぐしゃで僕は胸が痛くなった。
母さんが僕の肩を掴む。日本は人間を燃やして骨にするらしい。
空はこんなにも青い。兄ちゃんは煙なって空になる。やがて雲になって、雨になって僕たちの皮膚に染み込むんだって、母さんが教えてくれた。
「それで、兄ちゃんは明日帰ってくるの?」
僕の何気ない問いかけに、今度は母が崩れ落ちた。僕が言った言葉はそんなに悪い言葉だったのかなぁ。
僕はなんにも、わからなかった。
/空はこんなにも
6/25/2025, 9:33:20 AM