木陰で伸びをして、起き上がった君の頬には、地面の草が押しつけられた跡が点々と残っている。
木漏れ日の跡だ、と君は笑った。
確かに、その日は木の梢から、緑色に色づいた木漏れ日が、地面にパラパラと写っていた。
昼休み、いつも君は中庭で呑気に昼寝を楽しんでいた。
その日は予鈴がなって、たまたま仲良しグループで一番中庭近くにいた私が、君を起こしに中庭に出たのだった。
君は優雅に木陰の芝生に寝転んで、すやすやと眠っていた。
声をかけると、のんびりと体を伸ばして、頭を掻いて、自分の顔を撫でた後、頰のぼこぼこに触れながら、こちらにふんわり笑って言ったのだ。
「木漏れ日の跡だ」と。
その時、友情とも違うなんとも言えない気持ちが、私の心の奥で、微かにざわめいた気がした。
ざらついた、今までとは違う好意が、私の心の底にぴちゃり、と溜まったような。
君は、そんな私の心のざわめきなんて知らない様子で、まだ眠気の残る緩慢な動きで立ち上がって、こちらを見る。
それで、私も慌てて君に笑いかけた。いつものように。
君の頬には、相変わらず、寝押しの跡がついていた。
木漏れ日の跡だ、私は思った。
いつも通り、馬鹿みたいな雑談をしながら君と歩き出した。
いつもと変わらない日常。
けれどいつもと変わってしまった私の気持ち。
私の気持ちの変化が、現実のものであった証明のように、君の頬には、木漏れ日の跡が、くっきり残っていた。
11/16/2025, 4:10:31 AM