お題:あなたに届けたい
2222年、ネコ型配膳ロボットはネコ型宅配ロボットへと進化していた。
「いつもありがとうね。ネコちゃん」
「とんでもないです。またのご利用お待ちしてますにゃん」
配達を終えた1台のネコ型宅配ロボットが短い足で老女の前から立ち去る。次の配達先まではそこまで遠くないので四足歩行モードで問題ない。距離が遠いときは、200年ほど前に活躍していたネコ型配膳ロボット同様にホイールを使うこともある。
その姿はロボットのモデルとなった動物のネコより大きく、どっしりと安定感がある。荷物を落とすリスクを減らすためだ。
次なる目的地にやってきたネコ型宅配ロボットは、玄関扉の前で荷物の受取人へと信号を飛ばす。するとほどなくして扉が開かれた。
「お荷物お持ちしましたにゃん」
「おう。ベルか」
受取人である田宮タモツが現れる。しゃがんで荷物を受け取り、ネコ型宅配ロボットの頭を撫でた。ロボットはキューと鳴き声のような電子音を発する。
ベルとはこのネコ型宅配ロボットの個体名である。ネコちゃんと呼ばれることが多い中、タモツは個体名を覚えている数少ない人間だった。
「お前ネコならネズミの形したもんとか好きか?」
「見た目がネコなだけなので、ネズミは好きでも嫌いでもないですにゃん」
「そっか。なんかお礼したいのにな」
「お気持ちだけで充分ですにゃ」
肩を落とすタモツにベルは言葉をかける。ベルの内部のポジティブメーターが上昇した。
ネコ型宅配ロボットは、将来的には地域住民の見守りや人間同様の交流もおこなえるよう改良中である。まだ公にしていないため関係者以外はポジティブメーターの存在を知らない。
タモツが快活な笑顔をベルへ向ける。
「また荷物頼んだときはよろしくな」
「かしこまりましたにゃ」
またタモツの家に行ける可能性がある。その答えをプログラムが弾き出した瞬間、ポジティブメーターの数値はまた増えた。
1/30/2026, 3:07:35 PM