佐目毛

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あれは、いつだったかしら?
夕刻、フランス窓をノックする音がして振り返ると、神妙な顔をしたエミリーが立っていた。
私は鍵を開けてやると、少し遠慮勝ちに入って来た。
いつものツイードのジャケットにスカート、短髪の金髪の巻毛が乱れていた。ここまで、走ってきたようだ。エミリーは胸元に手を当て、息を整えていた。
「何があったの?」私は訊ねて
「こっちへ来て、お茶を入れるから、座って」
エミリーをチンツ張りの椅子に座らせた。
私はエミリーと自分のティーカップに熱いお茶を注いだ。
「窓から入って来たりしてごめんなさい」エミリーは、静かに、緊張気味に言った。
「お茶を飲んで」
「頂くわね」エミリーはゆっくり、ゆっくりと熱いお茶を飲み、一息つくと、話し始めた。
「今からする話しは誰にも言わないでくれる?私もはっきり確証が取れないの、私が見たことが、本当なのか、夢なのかも、解らないの」真に迫った表情で私を見つめていた。

6/5/2023, 10:25:38 AM