蝶よ花よ
小さい頃は蝶よ花よと持て囃され、少女から女性になる頃には伯爵令嬢とチヤホヤされていた。誰もかれもが羨む様な生活を送り、誰からも愛されていた私の人生は、一発の銃声でガラスのように砕け散った。
父が撃たれた。
父である伯爵は国の官僚に属していたが、穏健派で外交にも力をいれていたし、国内にも目を向け貧しい人にも優しかった。
それでも父は殺された。この国の行く末は暗く、貧しいものになっていくはすだ。
私の人生も一変した。館には住めなくなり、夜逃げ当然に館をあとにした。今までは父の庇護のもとに生きていたが、仕事をしなければならなくなった。蝶よ花よと育てられた人生は全く役に立つものではなくなった。
あれから2年。
私は父を撃った国賊組織にスパイとして潜り込んている。迷彩服に身を包み、化粧っ気のない顔で髪もホコリにまみれている。それでも生きている。
幼少期の華やかな生活の中で1つだけ役に立つことがあるどすれば、それは母国語以外に言葉が話せることだ。他国の言葉を話せる事で、国賊組織が他国とする交渉の要となっている。つまりは外交。
それは父と同じ仕事。
父とは仕事の目的が違うかもしれないが、父と同じ外交の仕事をしていることを胸に強く生きていかなければならない。
絶対に生きのびてやる。
8/8/2024, 12:21:47 PM