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誰かと手を繋いだ記憶を辿った。

高校3年生の冬、なぜか分からないがクラスのある女の子と妙に仲良くなったことがあった。仮にAちゃんとする。仲良くと言っていいのか、よくわからない距離感だった。Aちゃんは所謂陽キャと分類される子で、かわいくていつもいい匂いがした。それまでは会話すらしたことがなかったのに、急に話しかけてくれることが多くなった。

3年生の冬の授業なんて、ほぼ暇つぶしのようなものだろう。授業で映画を見ていた。
前の席にAちゃんが座っていたのだけど、映画が始まる直前に私の手を繋いできたのだった。そのまま映画が始まって、私は手を離すタイミングがわからなかった。徐々に手汗をかいてきて、引っ込めようか、いや、ここで手を引っ込めたら彼女に失礼かな…など悶々としながら寝たふりをきめていた。Aちゃんは前に座っていたので、本当に意味がない行動だったが。

いつまでそうしていたかわからない。結局自分から手を引いたと思う。手は汗で湿っていた。もちろん映画の内容は頭に入っていない。

彼女もいつ手を離そうか悩んでいたのか、それともなんとも思っていなかったのか今はもうわからない。

短い冬の出来事。この記憶を思い出すたび手で顔を覆いたい気持ちになる。今もだ。
うぁあああ…。

Aちゃん!Aちゃんは何も考えてなかったと思うしもう覚えていないだろうけど、私はあの冬いっつも心臓バクバクしてたよ!ばーか!もう会うことはないよね。Aちゃんの真意もわからない。でも幸せでいてくれたらうれしいよ。

この記憶とも早くお別れしたいな。

12/9/2024, 11:30:35 PM