ミミッキュ

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"太陽"

俺は希望を夢見てはいけない、光を望んではいけない、俺の周りを見渡せば絶望が広がっているだけ、だから俺は闇の中で生きていく。あの時からそう思っていた。

それを、長い年月が経ち出会った、自分より年下のアイツらに覆された。光を望まず拒み、怖くても闇の中を彷徨っていた俺にアイツらは絶えず構わず俺に歩み寄って来た。何度拒んだとしてもそれでも歩み寄って来て、俺が離れてもアイツらはその分俺に寄って来た。俺とは相容れない、光の中を生きているアイツらに何度言っても離れても無駄で、逆に闇の中に入って来た。「何故」と聞くと「俺を知るため」と言って入って来た。ただ暗くて怖いだけの闇なのに、何を知るというのだ。闇なんてもの、知ったところでどうする。意味が分からない。そう呆れているとアイツらが言う。
闇は拒まず全てを受け入れ、包み込んで安らぎをくれる、と。また意味が分からない、一瞬そう思ったがよく考えてみると、この闇は俺が望んで踏み入れた、闇はそれを拒まず何も言わずに俺を受け入れ、酷く傷付いた俺を包み込んで癒してくれていた。何回か、絶望の中で光を見出した者を見た。闇はその者を追わず、逆に祝福している様だった。その時は分からなかったがようやく分かった。闇はいつも、来る者拒まず去るもの追わず、全てを受け入れ包み込み心の安寧をくれる。そして、現状を打破し再生する未来を望む者を祝福し優しく見守る。そう考えていると、「まるで月の様だな」と勝手に口が動き声帯を揺らした。それをアイツらは聞き逃さなかった、アイツらは頷き「俺の様だ」と言葉を繋げた。「ただの暗闇だと周りがよく見えない。暗闇を優しく柔らかく照らす光を持つ俺は月の様だ」とも言ってきた。「俺なんかが光を持っている訳が無い」そう否定すれば「闇の中でも優しい光を纏っていたから、恐れずにここに来る事が出来た。」と言われた。俺を道標にして来ただと?、なんだかむず痒い。それに、たとえ俺が光を纏っていたとしても、そこまでの光では無いはずだ。「光は太陽だけじゃない、月も光。ただの闇でも周りをよく見れば、どんなに弱くとも、小さくとも標となる光がある。」そう言われ、またむず痒くなった。けど、こんな俺でも先導する光を持っているというのなら、
お前らを勝利へ、更なる希望へと導く。そう高らかに言ってアイツらの手を取った。

現状を活かし延長としての未来を夢見た光を持ち、どんな頼りない光でも掴んで進む力に変え前へと進んで来たアイツらに。今度は俺が、現状を打破し再生する未来を望む闇を持つ俺が先導しアイツらに希望と未来を。先導する者としてまだまだ頼りないかもしれないけど、アイツらが道を間違えず進めるように優しく照らし支えよう。

8/6/2023, 12:01:55 PM