「お茶言葉って無いのかしら」
カチリと鳴るティーカップ
胡乱な視線の先で笑う瞳
「四つ葉のクローバーにも枯れた薔薇にも
花言葉はあるでしょう?
それなら、茶葉にだって有って良いと思わない?」
「はぁ、そうね」
摘んだクッキーを舐めた指
壁に並んだ紅茶缶を一つ
「じゃ、あれ何て付ける」
「特別な時間」
「……あれは」
「あなたと一緒にいたい」
「本体の言葉パクってくんなよ」
「ふふふ」
ついと輝く小さなスプーン
別々の缶から混ぜられた茶葉
「それなら、あなたはこれに何て付ける?」
随分昔に作ったブレンド
ミルクでも砂糖でもレモンでも
どうにもならない香りだけの苦い茶色
好みの違う二人分を
無理矢理一つにした歪を
くるり乾いた皿に混ぜながら
「まあ、一つしか無いだろ」
冷たい指先から奪った葉々を
クリームに掛けて一口に仕舞う
喉を引っ掻く小さな痛みを
幸福そうに見つめていた
‹紅茶の香り›
10/28/2024, 10:28:25 AM