ストック1

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ホゾノ語は失われた響き
話せる者も、今となってはごく少数だ
そう遠くない未来に、ネイティブ話者はいなくなることだろう
我々ホゾノ族がかつて使っていた言語には、現在使う言語では一言で言い表せない意味の単語がある
それは、「パツォヤーナ」
意味は、「利き手でない方の手」
現在使っている言語では他に、難しい方の手、馴れていない方の手、などと表現する
なお、利き手は「ヌソヤーナ」
ヤーナが手を意味するのだ
ホゾノ族の使う言葉が変わりつつあった時、我々の先祖は面倒くさい、不便だと思ったらしいが、そもそも、当時すでに利き手でない方の手を話題にする場面があまりなかったため、結局は別にいいかとなったらしい
かつてのホゾノ族にとって、利き手は神聖なものだった
そして利き手でない方は補佐としての役割である、とされた
ヌソはホゾノ族の神の名だ
パツォはその神を補佐する精霊の王の名
そして、左利きの人間は神に選ばれし者として大切にされたのだという
左利きは割合が少ないから、特別視されたのだろうな
ヌソは左利きと言われているのだが、それもそういったところから来ていると考えられる
利き手が信仰上重要だったからこそ、逆の手も単語があった
だが時が経ち、信仰も薄れ、利き手も重要性が下がった
だからパツォヤーナを使う機会も減っていたのだ
行わなくなった儀式も多く、残った儀式も今ではちょっとした祭りとして楽しむのみ
当時を知らないとはいえ、ホゾノ族として少し残念ではあるが、時代の流れというのはそういうものなのかもしれない
私も古い言葉は話せないしな
ただ、ホゾノ語を話す者がいなくとも、言語を何らかの形で後世に保存できたらと思う
そのためにも、話者や研究者と協力してホゾノ語の全てを記した文書を形にしたい

11/29/2025, 11:30:47 AM