『静寂に包まれた部屋』
数日前から、妙な噂が広まっていた。
近いうちに世界が終わるのだとか。
核兵器によるものか、巨大な隕石によるものか、宇宙からの侵略によるものか、そのどれでもない未知の事態が起こるのかもわからない。
そのせいなのか、今日は平日にもかかわらず休みとなった。
不思議なことに、全国一斉に学校も会社も官公庁も休みである。
理由は知らされていない。
それがまた噂の信憑性を増し、人々が戦々恐々と周囲を伺っている気配がする。
外にいてもピリついた空気に疲弊するので、部屋に籠もることにした。
喧しいのでテレビはつけない。
溜まっている未読の本でも読もうかと本棚の前に移動すると、不意に窓から指す陽射しが翳った。
空に大きな、いや、空一面を覆うほどの巨大な足の裏が、ゆっくりとこちらに振り下ろされようとしている。
皆気づいているはずだが、声を上げる者は一人としていない。
私もまた、静寂に包まれた部屋の中で、ただ呆然とそれを見ていた。
9/30/2024, 9:34:44 AM