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まだ見ぬ世界へ

 消毒液の匂いと、冷ややかな色の蛍光灯が研究院の廊下に広がっていた。白い壁、白い天井、白い床。清潔感を思わせるような、白で統一された構造。空調は正常に作動し、最適な室温を保っている。
一切の不快感がないように整備されているにも関わらず、どこか居心地が悪いように感じてしまうのはなぜだろうか。
窓のない箱のような部屋の中で何度も、飽きるほどに思い描く。外へ、出られたら。
この研究院の中しか知らない。他を知る必要もない。それは余計なノイズとなり、動作処理に影響を及ぼす可能性を帯びてしまう。
頭では、そう理解しているのに。

ああ、そこの扉を開けて。走り出して。肺の中に許容量を超えるほどの外を吸いこんで。

ときどき通風口の向こうからかすかに聴こえる「雨」の音。
雨、とは何だろう。外の向こうにあるのだろうか。無数のものがぶつかるような音をしていた。どんな姿をしているのだろう。

しかし、それらは叶わぬ夢。ここで利用され、早々に廃棄される運命。

それでも、想いを馳せている時だけは、外を見ることを許して。
それだけが、自由だった。

6/27/2025, 4:29:43 PM