シオン

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 ボクはその『日』も権力者集団の部屋にいた。
 ボクの洗脳する日が明後日に決まって、ボクは何もかもに絶望しちゃって。
 だからコロコロとベッドで無駄に時間を過ごしていた。
 ガン、という音と共に扉が開いて、少し苛立った偉い人が言ったんだ。
「今すぐD-3エリアに行け。お前は今日からそこの管轄しろ。『ピアノ弾き』から迷い子を守れ」
 その言葉を吐きながら、ボクに服を投げつけてきた。権力者の服、権力者の服だった。
 つまりボクは救われたのだ。また住人に戻らずに済んだのだ。
 ボクの洗脳能力が他人よりも劣ってることが気にならないくらい、ボクのことが大事だったのだ。
 そうして着替えて外に出て、管轄のとこまで行ったとこで見つけてしまった。
 風にたなびく白銀の髪。憂いを帯びた顔。
 その全てがボクの鼓動を早くした。
 と、同時に彼がピアノを弾いてるという事実がボクの心を否定した。
 彼が『ピアノ弾き』なんだ。彼がボクたちの敵なんだ。
 恋心は生まれると同時に消さなきゃならないものとなってしまった。

5/7/2024, 3:36:58 PM