【世界線管理局 収蔵品
『純金製のリンゴ』】
世界多様性機構からの寄贈品と推定される。
直径10cm。リンゴの形をしている。
「管理局に勤務する、最も偉大な神様へ」
と書かれている付属の手紙から、
いわゆる「イチバンの神様へ」タイプの不和誘発を意図した贈答品と思われるが、詳細は不明。
純金製につき、資産価値が高く、
どの神様へ渡ることもなく
経理部長室にてリアルタイム相場とともに展示中
<<リアルタイム相場とともに展示中>>
――――――
「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなし。
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織は、
世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり整備したり、
滅んだ世界からこぼれ落ちた難民たちをシェルターに収容したり、
その滅んだ世界から落ちてきたチートアイテムが他の生存世界で悪さをする前に回収・収蔵したり、
要するに、世界に関する様々な仕事を、文字どおり世界規模で為しておりました。
管理局の難民収容事業を良く思わない者も、
実際に収容されておる難民たちの意見はともかく、外野にチラホラおりまして、
『管理局から難民たちを解放しよう!』
『シェルターに囚われた難民たちを、閉鎖空間から解き放ち、他の世界へ移住させよう!』
『公的機関、世界線管理局をぶっ潰せ!』
なんて叫ぶ活動家や過激派も、いるのです。
で、
世界線管理局を本気でぶっ潰そうとしている組織の中に、世界多様性機構なるのがおりまして、
これまで管理局にテロを仕掛けたり、
管理局の局員を拉致してみたり、
管理局の資金を盗もうとしたり、情報を抜き取ろうとしたり、山あり谷あり、
色々アレコレ、多様性機構も頑張ったのですが、
そうです、巨大な公的組織と比較的大きめ程度の民間団体の衝突なのです。
勝てるワケがないのです!
「ちきしょう。また失敗した」
多様性機構は消耗戦。
「俺達じゃ、管理局には勝てないのか?」
優秀なスパイ、プロの工作員、知識ある爆弾魔、
いろんな構成員を管理局にぶつけてきましたが、
皆みんな、ことごとく、逮捕されました。
そこでお題回収。「神様へ」です。
外から殴りかかって勝てないなら、
内側から争い合い、潰し合って貰えば良いのです。
某世界、某国、某神話圏の不和誘発贈答品、
「不和のリンゴ」を使いましょう!
「不和のリンゴ?」
「ほら、『イチバン美しい女神様へ』ってやつ」
「はぁ。それで?」
「管理局には、いろんなやつがいる。
獣人も人間も妖精も宇宙タコもいる。
他の世界で『神様』に認定されてるやつもいる。
『最も偉大な神様へ』って、黄金を送るんだ。
そうすれば、誰が最も偉大かで、間違いなくモメて、大騒動になる!」
「その混乱状態を狙って叩くのか。なるほどな」
管理局員同士、内側で勝手に潰し合わせる、
それはそれで良いアイデアかもしれない。
世界線管理局が憎くて憎くてしかたがない世界多様性機構です。
争い合わせるに相応しい、実際に資産的価値のある金属を使って、
機構はせっせこ、だいたい直径10cmくらいのリンゴを1個、こさえました。
なかなか重いリンゴです。
だって10kgあるのです。
ぶっちゃけ、泣けなしの資産ですが、管理局を潰せるならそれで良いのです。
「ヒヒヒ……これで良い!」
さあ、管理局の最も偉大な神様へ、不和の贈り物をしに行こう!
世界多様性機構の構成員は、悪い笑顔で管理局に忍び込みました。
管理局は難民シェルターで、ちょうど常夜明けの祭りの最中。
管理局員も、難民たちも、楽しそうにしています。
ここに不和のリンゴを置けば、間違いなく、大混乱なのです!
「設置完了。ズラかるぞ」
良さげな場所に「偉大な神様へ」の手紙と悪意ある黄金を置いて、機構の構成員が去ってゆきます。
「管理局め。せいぜい争い合うがいい!」
ははは、ハハハハハ!
笑って機構に帰るスパイ一同ですが、
そのリンゴの結末は、冒頭の紹介文のとおり。
すなわち彼等の願いは神様に届かなかったのです。
ザンネン、ザンネン。
4/15/2026, 4:24:09 AM