ミキミヤ

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【波にさらわれた手紙】

海水浴に来て、君が海の波と戯れてる様を見ていた。なんてキラキラして眩しいんだろう。
「君もこっちに来なよ!」
って、声をかけてくれるけれど、私は水着姿にも自信がないし、泳ぐのだって得意じゃないし、見てるだけで十分楽しいから、首を横に振った。
そんな私の様子に、君は少し残念そうな顔をするけれど、すぐに海と遊ぶのに戻っていく。

手持ち無沙汰だった私は、砂浜に穴を掘ったりお城を作ったりして遊んだ。そして、その影にひとつ、相合傘を描いてみる。大好きって気持ちを込めた、いわば君への手紙みたいなもの。

この位置じゃ、すぐに波にさらわれて消えてしまうだろう。
今はそれでよかった。私は君が好き。憧れてる。でも、住む世界が違うような、そんな隔たりも感じてる。今この気持ちを告げても、きっと君には届かないから。

案の定、私の描いた相合傘はあっという間に波にさらわれてしまった。私はそれをほんの少しだけ寂しく思いながら、顔を上げた。君が私に手を振っている。
手を振り返しながら私は、眩しく思って君を見ていた。

8/2/2025, 1:15:59 PM