NN BOX 出会いをありがとう!

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「風が運ぶもの 」


それは、土だったり


花の粉であったり


ある時には、人工物だったり……



まいにち何かを動かす風は……
…稀に不可解なことも運んでくるらしい。



例えば、今の状況を、
5分前のオレに説明したとして、信じてくれるだろうか?
いいや、信じないね。


それどころか……
あきれた顔をしてミライのジブンをしんぱいしてくるにちがいない。



…しか…し、…だ
何を言おうと、オレは体験してしまったのだ……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




オレがよろけると同時に、
「すみませんっ!」
と綺麗な声。


「だいじょうぶっす……

しんぱいさせない様、できるだけ明るい声で
体を起こした。



…こっちこそす」
しかし、目線の先には、誰も居ない。


「……は?」


思わず見回す。
……なーんにも変わらない景色に、ゆっくりと顔が引きつっていくのが分かった。


いや、いやいやいや!!!!

絶対にぶつかった!!
感覚もした!!
いたい…というか、なんというか…少しやわらかかっ……ごぉほんっ!


と、とにかく、あやまる声も聞こえた……!!!


なのに、な……で
ま、まままま
……まさか、あ、あれか………

ゆゆゆゆゆ………れ……



「大丈夫ですか?」


っ!?!!!!!
体を大きく震わせる。

余裕なんてないくせに、
客観的に見たらちょっとかっこわりぃだろうな、
とか考えだすオレの脳。



「…怪我とか、ないですか?」


……。
……上だ。
うえから声がする………




……すうっ、………

はぁーーーーー

精神統一して、ゆっくりと顔を上げた。



「…!よかった!大丈夫そうですね!」


……気絶した。
いや、倒れてないから身体は気絶はしてないか。


オレの上に、
長い髪をなびかせながら、女性がふよふよと浮いている………




………ぁ、ああ………




「あれ、もしかして、野木君?」


「!?!?!!」


この時、なんでオレの名前知ってるの?とか、
声にならない声とはこのことだったのかとか、
普段から小説読んでてよかったなとか
これは走馬灯なのかなとか
もうオレは何を考えてるのか、何を考えたらいいのかもわけわかんなくなっていた。


ビュオオオオオオ


反射で目を瞑る。
もう、いっそこのまま気絶させてくれ………


「あ、やば風だ」

「私、春竜!!」
「野木君!!明日また会おうね!!!」


喋りかけられたことと、これから起こることを理解したくて、
今度は、力一杯瞼を開けた


オレの目に入ったのは、
遠くを飛びながら、手を振っている、姿。


それも、強風と共に、小さくなって見えなくなった。



「飛んでる……」
一言で表すと、そうだった。


それに、あの声聞き覚えがある。
………あれ、春竜って……



同じ切り絵教室の生徒じゃん。











3/6/2025, 11:52:52 AM