創作 「善悪」
善玉菌、悪玉菌、日和見菌。腸内細菌の数のバランスでお腹の調子が変わってくる。腸内環境を整えるには、食物繊維が多い食材を一定量食べ、適度な運動と睡眠をすること。知識はある。気をつけたいとも思う。だけど、どうにもならないことがある。
おいしいものはついつい食べすぎてしまうんだよ!
お菓子がおいしすぎるのは罪だろう!
夏のソーダアイスが悪魔的すぎるんだよー!
「えぇ、何これ……秘密ノート?」
俺は廊下に落ちていた無記名の「秘密ノート」を眺め首をひねった。この筆跡はどこかで見たことがある。そして、持ち主はお菓子が好きな誰か。俺の脳内に徐々にその人物像が浮かび上がる。
調理室に向かい、目的の人物を呼んでもらった。
「これきみのノート?」
小柄な彼女は恥ずかしそうに真っ赤になりながらノートを受け取り、脱兎のごとく元の場所に戻っていった。
「なんか、おせっかいだったかなぁ」
後日、俺はノートの持ち主に廊下で呼び止められた。拾った場所や経緯を話すと、ノートの持ち主はようやく安心したようだった。
「この前はごめんね。まさか、男子に見られるとは思ってなかったから、恥ずかしくて」
「俺こそもう少し渡し方考えてればよかったな」
「ううん、大丈夫。すぐに見つかって安心したよ。じゃあ、また明日」
「うん、じゃあね」
スムーズに解決してよかったと俺はほっと息をつく。そして小柄な彼女の「秘密ノート」についてそっと記憶の奥深くにしまいこむのだった。
(終)
4/26/2024, 1:19:06 PM