夕飯が終わった後のまったりタイム。
今日の片付け当番は私だけれどギリギリまで手伝ってくれた後に恋人の彼は珍しくソファに横になってスマホをいじり倒している。
私はソファの前の床に体育座りをして彼が空くのを待った。
五分、十分。
気がついたら三十分、放置された。
私の頬は自然と膨らむ。
そりゃ一緒に住んでいて、毎日顔を合わせているからふたりの時間を過ごしているんだけれど。
ひとりの時間を邪魔しちゃダメとは思うけれど。
さみしいー!!
私は彼のお腹にアゴを乗せて彼を見つめる。
「かまって欲しいですー」
彼はスマホから私を一瞬見つめる。けれどすぐにスマホへ視線が戻されてすいすいと操作に戻り、無気力な声が響く。
「あとでね」
私、まだ放置されちゃうの?
いや、ひとりの時間は大切だよ。私自身もひとりの時が必要な時があるからそれは分かるよ。
でもふたりでいる時間だよ。
そんなことを考えていると頬を膨らませてしまう。
「あとでかまってくれますか?」
「あとでね」
そしてまたスマホに彼の意識が戻っていく。
「約束してくれます?」
「約束するよ」
「約束ですよ!」
「うん」
私は彼のお腹に顔を乗せてグリグリと横に首を振った。
「約束ですからねー!!」
「うあっははははは! ちょ、待って。くすぐったい」
彼は反射で動き、足をバタバタさせる。スマホを持っていた腕も大きく動いていた。
「あー!!」
彼の大きな声にびっくりして顔を上げると、振っていた頭を止めてしまった。
彼はお腹を抑えながら、スマホをまた操作する。そして〝ポコン〟とスマホが小さく鳴った。
「なんの音です?」
思わず首を傾げて彼を見つめると、苦笑いして起き上がってから普通に座り直す。そして、大好きな太陽のような笑顔とスマホの画面を私に向けてくれた。
そこには彼のお腹に顔を乗せて頬を膨らませる私が映っている。みるみるうちに彼は悪い笑顔に変わっていった。
「撮ってたんですか?」
「うん、可愛かったから」
彼はスマホを置いて私を抱き寄せる。
「約束、まもるよ」
おわり
三八三、約束だよ
6/3/2025, 1:40:21 PM