〈お題:ささやき〉
求めているのに、届かない。
さんざめく大通りから細い通りを眺める。
踏んだり蹴ったり、凹んで傷物になったペットボトルが僅かに音を立てて姿を眩ませた。
モノクロな景色。
その中で嫌に目に付く張り紙に心が揺さぶられる。
「そこのキミ!」
「私達は見てるよ!」
そんなポスターが貼られている。
揺るぎなく、風が吹き荒んでも変わりなく。
誰も彼も掲示板に意識を向けることはない。
色褪せたポスターが移ろう流れを見続けている。
また一つ、ポイっと放り捨てた輩が足速にその場から逃げてゆく。
ペットボトルが人混みに残されてやがて見慣れた姿になってどこ吹く風と消えてゆく。
「ポイ捨てしないでね!」
かつてポスターが主張していた事柄は、薄情にも風化していった。誰の心の中にもポスターの求める事に深く賛同する者はない。
騒がしい通りのポスターをマジマジと見詰めて、褪せた言葉を、囁くばかりの私達に耳を傾ける人なんていない。
草臥れた僕はそれを細い通りから眺めている。
4/22/2025, 3:12:46 AM