雨の匂い。
エアコンの効きすぎた寒い部屋。
毎日のようなフラッシュバック。
日記は書けない。
祖父からもらったきれいな日記帳。
開いて、書こうとしても手が止まる。
おかしいな。
スマホのメモアプリだったらなんでも吐き出せるのに。
フラッシュバックのことも、その日あった嫌なことも、書いて書いて書きなぐって、終わったらすぐに削除する。
ああそうか。
この日記帳は私が使うには綺麗すぎる。
私の醜い部分が浮いて出てしまう。だから書くことに躊躇いを覚えてしまうのだ。
それに紙だから書いたら跡形もなく削除することはできない。
消しゴムをかけても、私の醜いその日の過去は消えてはくれない。
破いて捨てようにも、紙自体はなくなってくれないのだし、こんな綺麗な日記帳を破くこともできない。
そうして、その日記帳をそっと机の奥にしまい込んだ。
もうあの日記帳が登場することはないだろう。
これからも私がそこに、後で見ても耐えられる文を書けるわけがないから。
─私の日記帳─ #45
8/26/2024, 11:49:58 AM