深草少将という男は、小野小町から百日通い続けたなら想いを遂げさせようと言われたのを信じ、ひたすらに通い続けた。
が、
九十九日まで通い続け、今夜成就するはずの夜、大雪が降って凍死してしまった。
これが百夜通いの伝説だが、なんて悲しい結末だろう。
尤も、小野小町は少将にさほど興味はなく、あきらめて欲しくて言った言葉だったから、その真実を知った方がよっぽど残酷かも知れない。
男はバカだから、想いが遂げられるとなれば、かなり辛くたって通うさ、百日くらい。
けれどその日々はさぞや溢れる気持ちではち切れんばかりであったことだろう。
悲惨すぎるだろうか?
いやいや、これはフィクションです。能作者達が創りあげたお話です。小野小町は実在しましたが、深草少将は違います。
ただ、百夜通いの伝説や、小野小町に纏わる数々のエピソードは今でも生き続けており、
かく言う私も、感銘を覚えたある作品が、ずっと超有名作家のアイディアだと信じていたのが、のちのち調べてみたら元ネタは能から来ていたと知って愕然としたことが幾度かある。
いや、私が能の世界に疎いだけと云う説もあるのだが…
2/6/2024, 5:49:53 AM