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ブランコ


それは裏庭にぽつん、と置いてあった。少し大きめな木の隣に小さな子どもが二人がけできそうな木製のブランコはなんだかおしゃれで、近づいてみて初めて気づく。
ところどころボロボロで、雨のせいか腐りかけているところもあって、座ってしまったらきっと壊れるだろうと容易に想像がついた。
それでも壊してしまうのはもったいないな、と思えるほどに愛着に似た何かを抱いてしまう。
いつか子どもができたら、こんなブランコで遊ばせてみたい、なんて思うけれど、今のところそんな予定はない。
そのうち取り壊して新しいブランコを作るのだろうけれど、今はまだこのままにしておこう。きっとこのブランコだって壊される準備なんてしていないはずだ。
そっとブランコを押して、揺らしてみる。キイキイ、と鳴る音はどこか懐かしくて、それでいてまったく馴染みのない光景が広がる。
新しい家は少し緊張するけれど、このブランコがあってよかった。馴染みのないものばかりの中で少しでも何か親近感がわくような、安心感を抱くようなものがあれば、帰る場所にはふさわしくなる。
遠くから名前を呼ばれて、そちらに向かう前にもう一度ブランコを見た。風に揺れるそれは私たちを歓迎するように揺れ続けた。

2/1/2023, 2:48:24 PM