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すれ違い

彼はとても優しい目をしていた、けれどとても寂しかった。

一番近くにいても抱き締め合っても凍りついてしまうほど寂しかった。

黙ったまま時間だけ流れて、背中合わせの心感じて気になるけど言葉に出せば消えてしまいそうで黙っている、とりとめもない心をどうすればいいの、水割りをもう一杯「おかわり頂戴」彼女はそう呟いて顔を私に向けた。

彼はとても愛しいと囁いてくれる、けれどとても寂しい帰ってゆくのを知っているから。

今だけ抱き寄せて、だけどとても寂しい
確かめたいけど一人になるのが怖い

心はいつも背中合わせすれ違いね、「やめちまいなよ、そんなの」黙って聞いていた私の背後から声がした、「さっきから、酒が不味くなるんだよ」彼女は振り返って彼を睨んだ。

優しい言葉をくれる人より彼女に必要なのはこういう人なのかも知れない私も振り返って彼を見たけど彼女が彼を見つめる眼差しとは全く違っていた。

同情憐憫の眼差しと被害者意識の眼差しと呆れた男の眼差し、すれ違いの眼差しが交差する午前零時の道頓堀のスナック時は1980年代の終わりここから三人の恋愛劇場第二幕が幕開けするとは、この時は誰も知る由もなかった(笑)


令和6年10月19日 

                心幸

10/19/2024, 1:18:56 PM