夏
あの日の空は、まぶしいくらいに青かった。
汗ばむ制服の襟元を緩めて、君はふいに笑った。
「夏って、なんか走りたくなるよね」って。
誰よりも足が速い君と、
走るのが苦手な僕。
なのにあの時、
「負けた方がジュースな!」なんて言って、
全力で君を追いかけた。
蝉の声が耳をふさぐように響いて、
息が切れて、心臓がうるさくて、
でも君の背中だけはちゃんと見えてた。
結局、僕が負けて、
君が買ってくれたラムネの味は、
なんだかちょっとしょっぱくて甘かった。
「また来年も、走ろうね」
そう言った君の笑顔は、
きっと一生、僕の夏の中に生き続ける。
7/14/2025, 10:28:59 AM