大きな音を立て形を変えたマグカップ。
2つで1つのデザインとなる物の片割れが、その役目を終えたかのように床に散らばった。
大きなため息を吐きながら怪我をしないうちに早々に片付けを始め、適当な紙袋に入れる。
(あなたも1人になっちゃったね)
感傷に浸りながらもう片方のペアマグを手にして、数日前に別れを告げられた恋人との思い出が頭を埋める。
大好きだった人、この人と結婚するんだとまで思えた人、ずっと一緒にいると疑わなかったのに急に別れを告げられ、いい女ぶって縋ることもせずに了承した自分がとても憎い。
この割れたマグカップのように、もう元には戻れないということはわかっている。
今からでも泣いて嫌だと縋りたい、足にしがみついてでも離れたくないと叫びたい気持ちを閉じ込め、形を失っていない片割れのマグカップを同じ紙袋に封じ込める。
あの人は、新しいペアのマグカップを買うのだろう。私とは違う人と並んで座りながら。
鼻の奥がツンとするのを感じつつも、2つのマグカップが入っている紙袋をグルグルとガムテープで巻き、ゴミ箱の隣に置いた。
6/15/2025, 1:37:54 PM