これは僕の追憶。
例えば、僕は朝一人でいたはずなのに、友達といたことになってる。
例えば、よく分からない人から声をかけられて友達なんて言われたことがある。
例えば、ある記憶の一部が抜け落ちてることがある。
例えば、ひどく既視感を感じることがフラッシュバックすることがある。
僕であって僕じゃない記憶。
僕は誰だろう
知らないし、知ってる。
まるで別の人間に移り変ったような気分がして不快だ。
いつしか、自分の名前も忘れそうで怖い。
だから、書いておくんだ。
──────僕の名は…
まただ、いけない。
この光景、どこかで見たことある。
度重なるデジャブにもう卒倒したい。
海馬に支障をきたしてる。
ん?海馬
どこかで、聞いたことある。
…あれ、こんなこと前もあった気がする。
これじゃあ、まるで…
痛い、痛い、痛い…!
頭が…割れる…
「…あれ、」
そう、これじゃあまるで…
「ループしているみたいですね。」
茶髪の髪をストレートに伸ばした女が慈しむようにベットに手を伸ばす。
その横には白衣にメガネといういかにも医者という医者がいる。
彼女が手を伸ばすベッドには脈拍ともに異常なし、おだやかに眠っている男がいる。
「…彼が、本当の自分を思い出すまで…ずうっと…」
慈しむ…否、全てを諦めたような目だった。
「…あれから、20年だね」
「うん。私も随分オバサンになっちゃった。」
「…君は相変わらず綺麗なままだよ」
どうやら医者と女は知り合いのようだ。
「そろそろ病院で隠し通すのも限界が来る…だから…!」
医者が男の首にそっと手を這わせると女はそれを制す。
「…なんで…」
「わかっているの。彼が目覚めないこと…いっそ殺した方が、アナタたちの負担が減ることも」
…でも、とまつ毛を伏せる。
「…諦めてるくせに、諦めたくない…これは私のエゴなの。」
ほろりほろりと流れる涙に、医者は観念したようでため息をつく。
「君が言うなら仕方がない。とっとと起きろよ…」
あれ?なんか、紙に名前が…
「──────海馬」
海馬?
誰?
ああ、頭が痛い。
3/25/2025, 10:48:05 AM