朝列車
濁るむらさきの都会を発車し
海街までの40分
トタン屋根にすずしく反射しながら 列車は
夜からのうすやみのなかを
みずを溜めるように 淡々とすすむ
車内には 顔のない太ももたちが
紺色の座席へしっとりと横たわり
揺れやまない灰色の空を呼吸し
待ちつづけている
いつか眼のひらくことを
抜け落ちた歯が床に転がる
濡れまとった朱色の ふりこぼすまま
灰の空を軋ませ ひかりのすじが
長方形のうすやみをふちどり
なぞる指先を待たずに
ひとつの朝が生まれでていった
(テーマ: オアシス)
7/27/2025, 10:22:52 PM