やるせない筈なのだが
何故、こんなにも
空とは晴れやかなのだろう。
八つ当たりだと知っていながら
朝靄を梳かす朝日を帽子で拒みつつ
周辺の風景を睨むことしか出来なかった。
「死んだってお互い様でしょう
このイカれた戦場じゃ
誰が何時死んだって可笑しくはない
私が先に敵地へ行こうが
貴方が先に敵地へ行こうが
膨れきった戦火を消すには
必ず誰かしらは犠牲になりますよ
なら、私は…いえ、俺は
育ててくれた上官殿へ恩を返せないまま
無駄に死にたくはないだけです」
…これ迄の指導や訓練に疑念を持つ程に
その瞬間は呆気にとられて…
いや、呆気なかったと言うべきか。
部下一人に率いられた少数隊は
上官命令に背き、本隊を守るべく
背後に迫る敵軍中隊のど真ん中へと
怯む事も無く突っ込んで行った。
夜戦での撤退が成功するか否かの瀬戸際
敵軍は夜目の冴えきらぬ暗闇から
突如、引き返してくる小隊に不意をつかれ
我々本隊は奇しくも予想より犠牲者を抑えて
無事に予定地へと帰還したのだ。
仕方ない、部下の勝手な判断
上官として、我々は無事
犠牲者は少なく済んだ…
やるせない。
本当に、情けない…!
こんな薄汚れた戦場で!
尊い犠牲などと、死んでものたまうものか!!
確かに私は死ぬべきでは無いのかもしれない
後続の者が決まっていようと筆頭者を失えば
刹那であろうが、隊全体の生死に関わる…。
しかし、だからといって
誰かが犠牲になる事などが
正当化されるべきでは無い…!
…私は上官として君という恥を
生涯、この身に塗り続けるだろう。
君の墓標を心臓に突き立て
たとえ、私が殉職しようとも
それが誇り高き死では無いことを
死んでも、忘れることの無い様に。
ー やるせない気持ち ー
8/24/2024, 11:37:11 AM