nil

Open App

体のラインに沿って張り付き、人間を支える罪無いハンモックのように。
何も知らない優しいカーテンタッセルが食い込む首を、ぜんまい仕掛けのように掻き毟っていた。肩の関節が抜けたときのような、取り返しのつかない音を立てて唾を飲み込む。軋む錆びた扉をゆっくり開けるのに似た呼吸音を残し、顰めた顔で腰を落ろしてゆく私を、並んだ標本たちが静かに見つめていた。
展翅された蛾の翅の、12個の目玉が、鱗粉が翅に浮かべた、末広がりの〝ハ〟の字の模様が。自ずと死にゆく私をずっと。ずっと、そこで変わらずに笑っていた。
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

7/3/2024, 10:14:52 AM