ここで待ってて中に図書室があるから
見知らぬ建物の前で私は1人になった
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受け付けらしい場所には誰もいない
私が書棚の回廊だと思ったのは寄贈本のコーナーだった
旅行の本を探そうとしたが雑な配架でみつけられない おまけにブランクの棚には 誰かが選んだままなのか積み重ねられた本達が置かれている 本の忘れ物?迷子みたいでかわいそう
黒馬ブランキー チャイルドブック 香の本
星野富弘詩画集……
いやいやこれも縁かもと一冊ずつ目を通しては
背表紙が見えるようにもどしていく
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鈴の鳴る道 花の詩画集
久しぶりに手に取った星野さんの本
(去年の春に亡くなられていました)
筆を口にくわえて力強い絵を描くという衝撃
その短い詩に込めたリアルなメッセージ
初期の頃から彼の作品に心打たれ大切に思ってきた….はずなのに久しく忘れてしまっていた
不慮のアクシデントで身体の自由をなくした
彼は多くの人の支えのもと詩人画家になった
その原点は身近な家族との共同作業
彼の思い描くイメージの色を お母様や奥様が根気よく作り出していたとその本で語っている
「46時中一緒なの私だって1人になりたい時があるわよ」そんな一言を奥様が(多分若い時ね)
言ったエピソードと共に
それでも自分を放棄せず すぐ後には日常の事全てをいつも通りにやってくれていたと
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年齢と病でほんの少し身体の自由度を失っただけで心が冷え笑うことが減った自分
身体の自由を奪われるということは
衣食住気に必要不可欠な行為さえ誰かに委ねなければならなくて
そのためには膨大な情報の一つ一つを他人に伝える手間と根気がともなうことを改めて思い知らされた
そしてそれを受け止め支える相手が存在していること
どれほどの傷みを抱えて生き切ったんでしょう
なのに彼の詩は優しくて力強くて正直で
何日もかけて少しずつ写生するという作品には
瞬間の感動がぎっしり詰まっている
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待った?人気のない空間に静かな声がした
こちらに向かって歩み寄ってくる人影
笑顔で応えていたと思う私
「ううん いい時間だったよ」と
ホント思いがけず彼の作品に再会し
当然だと思っていることがそうではないと
見失ってた幸せに気づけたから
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わたしは傷を持っている
でも その傷のところから
あなたのやさしさがしみてくる
星野富弘
小さな幸せ
3/29/2025, 2:16:29 AM