言の葉 音の羽

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柔らかい雨

今まで生きてきて、あたたかい雨とか柔らかい雨とか受けたことなかった。
だって、「なんとなく」で生きてしまったから。

いつからか、日々を楽しむことを忘れ、ただ平凡な日々を生きていた。ここで言う私の「平凡」はみんなの思っている「平凡」より重いと思う。みんなの言う「平凡」な日々って、友達と笑いあえる日々とか入るんだろうなぁ。うちには、いつからか友達と笑いあえる日々なんて特別に思えてきて。もういつからそう思ったのかなんて忘れたけど、今さら思い出したくもないね。

だから、私にあたるものは冷たかった。私が心の底から友達といえる人がいなくなって、周りとは話さなくなって、環境が変わればうちを冷たい目で見る人ばかりしかいなかった。私を変わり者みたいに見る人とかばっかりで、最初は嫌だったけど慣れた。でもホントは日々傷ついてるのに気づかなかっただけ。気づかなかったフリをしてただけ。

でもね、うちを優しくみてくれる人もいた。私の憧れの人とか、うちが1番信頼してる友達とかね…。
あ、1人例外がいたな。
コロナが流行ったあのとき。うちが進学するタイミングだった。分散登校とか、オンライン授業とかを経て、やっとみんなと顔を合わせた。その時は隣の男子とは話せなくて、「あ、どうしよ…」みたいな感じでめっちゃ不安だったけど、しばらく経って、隣の男子とも話せるようになったある日。うちは前日にちょっとだけ前髪切ってきたんだけど、誰も気づかなかったんだよねえ。で、席について、隣の男子が来て…。そしたら、その人が急に私の顔をのぞき込んで来て、、、あれはびっくりした。「何かついてる??」って言って、しばらくすると、「髪切った?」って言ってきてさ。びっくりした。「え、そうだけど。」まさか気づくと思われなかったからすごいなあと思って。
あいつの優しさはあのときの私の救いだった。
あのときの私にとっての柔らかい雨だった。

今の私の周りにはあいつはいないけど、そんな思い出があるだけでも十分。
今の私には私の憧れの人がいて、その人の放つ言葉が私にとっての柔らかい雨だから。

11/6/2023, 10:30:20 AM