Ringo

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旅の途中で食料調達の為に狩りをしていた
獲物が多く狩りに夢中になり、気付けばもう日が沈む頃だった
夜の森は危険な場所だ、夜目がきかない分襲われやすくなる
「近くに村があったな、そこで宿を探そう」

村に向かう途中不思議な雰囲気の場所があった
そこは他に比べたら明るいが、木々が壁のように囲っていて詳細が全く分からない
少し気になったがスルーして村へ降りた

運良くすぐに宿が決まった
小さめなテーブルとイス、そしてベッドとシンプルな部屋だ
多少古い感じもするが…贅沢も言ってられない
「そういえば…」
さっきの場所はここの村の人なら何か知っているかもしれない
そう思った俺は受付の方に行き店主に聞いてみた
「さっきここの近くの山で不思議な場所を見たんだ
木が壁のようになっているのにその中の方が明るくて…」
『あぁ…泉のある場所だね』
「泉?」
『そこへ向かう道だけ石が埋め込まれてなかったかい?』
確かにあった、導くかのように地面に埋められた少し大きめの石が
『あんた旅人かい?行かん方がいい
あそこへ行った旅人は二度と出てこないと噂されている』
「そこで何があったんだ?」
『さぁな、詳しいことは分からんが
婚約者が何日も山に入って帰ってこない人がいてな
調査団が捜索へ向かったがそいつもその場所も見つからんかった』
調査団が探したのに…?
俺はさっき確かにその場所を見た
「もっと詳しく教えてくれ」
『やめとけ、何人も好奇心でその場所へ行ったが誰もここに帰ってこんかった』
それ以上は店主から何も聞けなかった

次の日、他の場所へ行きあの場所のこのを聞き出そうとしたが
みんな口を揃えてあの場所へは行くなとしか言わなかった
「結局詳しい話は聞けなかったか…」
行くなと言われれば行きたくなってしまう、旅人の性だろう

夜に改めてそこへ向かう
正直迷うかと思ったが、何故かすんなり着いた
多少不気味な感じはあるがここまで来たら引けない
「この道の先に泉があるんだよな…」
石を辿り中に入ると、そこにはさっきまでの薄暗いやまとは思えないほど綺麗な泉があった
「ほんとにあった…」
泉に近づき周りを確認していると足音がした
「誰だっ!?」
振り向くとそこには女が様子を伺うようにこちらを見ていた
「女…
もしかして、ニンフか…?」
ニンフは山や川など様々な場所にいると言われている精霊だ、こちらを害することもない
ニンフはにこりと笑いこちらに近づく
「ここは君の住処か?」
ニンフは頷き俺の手を取り泉へ走り出す
「そんなに引っ張ったら…危ない!」
2人で泉へ落ちた
幸い浅かったので怪我もなく、溺れることもなかった
ニンフは無邪気に笑い水をバシャバシャさせている
「ははっ…危なっかしいな」
俺も自然と笑みがこぼれた

その後もニンフとかけっこをしたり、食事をしたり
時間も忘れ楽しんだ
「今何時だ?そろそろ次の場所へ行かなきゃ…」
ニンフは俺の手を取り悲しそうな顔をする
「もしかして…俺を気に入ったのか?」
少し俯きながら頷いた
ニンフは人間とも結婚することがある、俺はその相手に選ばれたのだ
過ごしたのは短いはずなのに、自分自身も驚くほどに惹かれていた
「わかった…ここにいるよ」
ニンフはとても嬉しそうに笑い、抱きついてきた
俺も抱きしめながら
「まさかこんな所で俺の旅が終わるとはな」

顔が見えないようにニンフは笑みを浮かべた
その笑みは無邪気なものではなく、悪魔のような笑みだった

泉の入口の前では店主が立っていた
『結局行ったか、誓約のせいで詳しいことは話せんかったが
この道の先にはリャナンシーが住み着いているというのに…』

7/3/2023, 1:13:42 PM