善と悪という概念がある。
人は生まれたときから正しく清らかであり、悪いことをしてしまったのならそれは育った環境が悪いのだという性善説。
人は生まれたときから悪であり、もしも清く正しい人に見えるのならそれは理性が強靭で、輪を乱すことを嫌っているだけだという性悪説。
この二つは善と悪というものを語る上で、よく話題になるものと思う。
諸君らも一度は考えたことがあるのではないか? "どちらの説が正しいのか"と。
故に、私は善人、聖人と呼ばれる人を無作為に十人。悪人と呼ばれる人を無作為に十人。合わせて二十人を実験の被献体とすることにした。
勿論事前に説明を行い、同意の上で参加してもらった。
実験はシミュレーターを用いて行う。善人には悪人の生い立ちを、悪人には善人の生い立ちを。それぞれ記憶を失った状態で追体験してもらい、どのような行動をするのかを観測する。
これによってどちらが正しいのか、証明されるはずだ。どちらの説も、言いたいことは変わりないということが。
悪いことをする必要はなく、その発想に至ることもない環境の人間と善いことという概念を知らず、その発想に至ることも出来ない環境の人間は記憶を失くし、立場を入れ換えてしまえばその立場に居た人間と同じように育つだろう。それが証明されれば、いかに性善説、性悪説と言うものが無意味なのか。それを世に知らしめることが出来る。
そうなれば、彼女のように吊るされる人が減るだろうか?
4/26/2023, 12:13:40 PM