怖がりな君は、暗闇が嫌い。
学校からの帰り道、当たりは、暗くなっていて街灯がちかちかと光っている。
「手、離さないでね」
そう僕に話しかけるきみの手は、かたく僕の手を掴んでいる。
「離す訳ないだろう?あ、そこ段差あるよ」
君がわ、と驚いて躓く。でも僕が下敷きになって君が怪我しないようにするんだ。
「ありがとう、怪我してない?」
「してないしてない!僕を誰だと思ってるんだい?」
冗談めかしでそう言うと君は、変なの、と言って笑った。
「こうやっていられるのもあとどれくらいなんだろうね…」
「君の目が見えるようになるまでだろうね」
君は、僅かしか目が見えない。けれどもうそろそろ手術をして、見えるように頑張るらしい。僕は、それが嬉しいようで嬉しくない。君と一緒に帰ることができなくなるかもしれないから。
君の家まであと少しというところで君が声を上げた。
「手術して、成功しても一緒に歩いてくれる?」
「……それは、できないかもしれないなぁ」
「どうして?」
君が不安そうに話しかける。
「この怪我沢山の君に見られたくなんてないから。君に悲しくなってほしくないから」だなんて言えなくて「秘密」と言葉をかわしてしまう。ばいばい、と手をふりあって一日の最後のお別れを交わして僕の帰路についた。
わたしは、きみが怪我をするのが怖い。
怪我をしても無理をするから。明るい場所なら薄っすらと怪我をしてるか確認できるけれど避けられているし、暗闇では、何にも見えない。
君が傷ついていることに気が付けないから。だから
怖がりなわたしは、暗闇が嫌い。
お題「怖がり」
3/16/2024, 2:02:42 PM