テーマ 巡り逢えたら
あなたもあたしも量産品
それでもあなたと出会った一期一会
巡り逢えた喜びに
希少性などどうでもいい
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テーマ 踊りませんか
うちの母ちゃんは、目立ってナンボの精神でできている。
ピンクの髪に派手なピアス。重そうなつけまつ毛に武器みたいな付け爪。笑えば喉の奥が見えるし、怒って近づいてくる時は地面が揺れる。参観に来たら廊下の端から俺を呼ぶし、運動会では誰よりも声を出して垂れ幕と団扇で応援してくるし、文化祭の劇では俺が悪役で高笑いしてるシーンなのに号泣してる。
さて、今日は夏祭りだ。老人会のじいちゃん、ばあちゃんが静々と踊る中、ピンクの半被に鉢巻きで勢いよく柏手を打って踊っているのは……うちの母ちゃんだろう。
半ば強引に踊りに誘う姿に恥ずかしさを覚えながらも、踊り始めた人々は案外楽しそうにしている。
あれは実は踊りたかった小さい子を連れた親子だな。
あ、めっちゃアレンジした踊りで若い子にダンスバトル挑んでる?
ビール片手のオッサンズの踊りはあまりに陽気だ。
巻き込む姿に感心していると、母ちゃんと目が合ってしまった。
「何傍観者のカシコのフリしてんだい!ほらほら同じ阿呆なら踊らにゃソンソン!」
ウチの盆踊りは阿波踊りじゃないけどな。
ま、俺がどんな対応をしたって「お前の母ちゃん強烈だな」と笑われる未来は変わらないだろう。
俺はひと息つくと、母ちゃんに見つからないよう被った狐の仮面を脱ぎ捨てて、隣の同級生に差し出した。
「コレ被っててでいいので、良かったら一緒に踊りませんか。」
後日、どちらかが仮面を被って盆踊りを一緒に踊ると恋が成就するなんてまことしやかな噂が出来上がっていた。
ついにうちの母ちゃんは恋のキューピッドの異名まで手に入れたらしい。
ふふん。流石は俺の母ちゃんだ。
10/4/2024, 10:24:23 AM