七雪*

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 三秒前の空の色を、爪の色と喩えようか。
明日にも姿を変える空を、僕は明確な形に象って、思い出の中に付箋を貼って綴じるのだ。

 あの初夏の空はラムネの色をしていた。
茹だるような暑さの中、ただ頭の中で涼しい思い出を反芻する。冷蔵庫から取り出したかのような水滴の光る瓶を脳裏に描いて、熱った手で自販機のボタンを押す。ピッと聞き慣れた電子音を鳴らし、自販機は目当ての飲み物を吐き出した。手を伸ばして容器を掴むと、ひんやりとした感覚が手のひらを伝い、身体を蝕む熱を急激に冷ましていく。鈍い痛みにも似たそれは、夏でしか味わうことの出来ない飲料の良さの一つだ。

 残念なことがあるとすれば、この飲料がラムネではないことだろう。あいにく、今日は眩しいほどの晴天であった。

6/28/2023, 2:44:53 PM