お題【今日の心模様】
『隙』
陽光が、埃の舞う部屋を無遠慮に暴いている。
私はただ、机の上の傷を指先でなぞっていた。ささくれだった溝に溜まるのは、時間の澱みのような、重く粘りつく何かだ。
何かを成し遂げたいわけでもなく、かといって、すべてを投げ出すために立ち上がる筋力もない。世間という巨大な歯車が軋む音を聞きながら、私はその隙間に指を挟んだまま、抜くことも、進めることもできずに立ち尽くしている。
カチ、カチ、と。
隣の部屋で時計が時を刻む音が、無人の空間に冷たく響く。それは規則正しい暴力となって、私の心臓を直に叩いた。
優しい言葉をかけられれば、その裏に潜む刃を疑い、沈黙が続けば、世界から切り離されたのだと怯える。この救いようのない自意識は、まるで冬の池に張った薄氷だ。一歩踏み出せば容易く割れてしまうし、留まれば底冷えに身を焼かれる。
ああ、私はただ、すべてを透過させる水になりたかった。
カーテンが風に膨らみ、窓枠との間に一瞬の隙を作る。
そこから滑り込んできた風が、中身のない私をそっと撫でて、またどこかへと抜けていった。
私は、自分の指を一本ずつ数え始めた。
4/23/2026, 10:36:54 AM