天気の話なんてどうでもいいんだ。僕の話したいことは
「よお、久しぶり」
そう言ってフランシスに話しかけたのは、彼の幼馴染であり狩りの兄弟子でもある青年だった。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
フランシスはできる限り丁寧に、他人行儀に、距離をおいた笑顔で応じる。兄弟子は僅かに寂しそうな顔で頷いた。
「うん。まあ。あー、でも、どうかな。嫁と別れたんだ」
「それは」
困ったような顔を作ってフランシスは言い淀む。それを自分に聞かせてどうしろというのか。彼の内心にマグマのようにどろりとした熱が沸く。
フランシスは故郷で彼と共に師である父について狩りをしていたときから兄弟子の事が好きだった。
けど同性であったし、彼には交際していた女性がいたからフランシスがなにか言うことはなかった。
そして、彼の結婚式の前日にフランシスは勇者一行に加わって村を飛び出した。
「なんかさ、やっぱ付き合うのと結婚って違うんだよな」
兄弟子は遠くを見ながらそう言った。
「あのさ」
「はい」
改まった様子の兄弟子にフランシスは唾を飲み込む。
「ちょっといろいろつもる話もあるし、同じ宿に行ってもいいかな」
フランシスは汗ばんだ手を握りしめた。
5/31/2023, 11:52:09 AM