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夜明け前

地平線の向こうに太陽が昇るまであと少しだ。
夜の終わりと朝の間。日々の繰り返しとはいえ何かが新しくなるような気がする。

そんなの当たり前じゃない?毎日、新しくなるのよ。植物を見ればわかるわ。私達もよ。

腰に手を当て風に髪がそよがせる。日の昇る前の薄明かりでも綺麗だ。乱れた髪をそっと直して僕を見て微笑。

身体の細胞は毎日生まれ変わっているんだから。あなたの朝の無精髭がいい証拠。おしっこしたりうんちしたり酷使していると思わないの?ほんと!自分の身体を大事にしないんだから。

ちょっと待て。排泄は代謝だろう?
なぜ、排泄ひとつでそう断言されないといけない。
僕は抗議しようと彼女に近づく。

定期検診を受けないひとに言われたくないわね。
無理しなくても食べていけるわ。お願い。検診受けて。

僕の働き過ぎを心配した彼女は夜明け前に検診では見つからなかった病気で死んだ。

生まれ変わるなら僕が生まれ変わる時にして。
必ずみつけるから。言えなかった事伝えたい。

9/14/2024, 7:10:15 AM