よつば666

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お題『懐かしく思うこと』

 白鳥(しらとり)に地元の夏祭りに誘われた当日の夜、真珠星(すぴか)は慣れない浴衣を着ていた。薄紫の生地に紺色の紫陽花の柄がデザインされている。
神社の裏口で白鳥を待っていると手を振る男性が見えた。
真珠星は心臓の音がドキッ!と大きく聞こえた。

白鳥「遅れたかな?」

真珠星「いえ。待ち合わせ時間ピッタリです」

白鳥「そう、よかった。遅れたらどうしようかと思ったよ。可愛い浴衣姿の真珠星ちゃんを1人ぼっちで待たせるのは罪だからね」

真珠星は顔が真っ赤になり俯いた。普段可愛いなどと言われないので照れてしまう。何か言わなければと思いつつも言葉が出ないので、はにかんだ笑顔を見せた。
神社の境内の中と外に出店している屋台を一通り見て、気になった屋台をいくつか回った後、足に違和感を覚えた。ズキッ!?と足の親指の付け根が痛む。こんな些細なことでせっかくの夏祭りを台無しにしたくない。そう思い真珠星は痛みを我慢してしばらく歩いていた。
すると白鳥は何かに気づき突然−−−−。

白鳥「背中に乗って!」

真珠星「えっ!?急に何ですか!?」

真珠星は動揺していた。焦っている白鳥を見るのは初めてだった。

白鳥「早くッ!?」

真珠星「は、はい」

白鳥の背中におんぶされた真珠星は人気の少ない境内の中にあるベンチに降ろされた。その後白鳥は鞄から絆創膏を取り出し真珠星の履いている。下駄を脱がした。真珠星の顔はまた赤くなったと同時に情けない気持ちなった。白鳥は真珠星の異変に早々に気づいていたらしい。白鳥は真珠星の足の親指の付け根に絆創膏を貼りまた下駄を履かせた。これ以上祭りは無理だから帰ろう。
白鳥は真珠星を再び背中におんぶして真珠星を家まで送り届けた。
自室に戻り真珠星は心の中で嘆いた。

『自分のせいで夏祭りが……告白するチャンスが……』

と高校生になった今、懐かしく思うことを酪農体験場所から少し離れた休憩所で萌香達に笑い話であるように話していたのだった。

End

10/31/2024, 9:53:06 AM