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幼少時代、自分に取っての宝物、それは近所にある公園でした。

放課後は必ずと言って良い程、友達とその公園に集合しました。野球をしたり、かくれんぼをして遊んだり、時には友達と言い争いになったり、遊び場でもあり学びの場でもありました。

そこにあった木製ブランコ、色鮮やかなジャングルジム、プラスチック製の青色と黄色のトンネルに包まれた砂場。公園入口付近の狭い駐輪場や、公園を囲う低いフェンスまで自分にとってはかけがえのない、宝物でした。

ある日、突然父親から引っ越しの話をされます。
あの時は、説教をされた後、ついでのように言われたのを鮮明に覚えています。引っ越すという事実、そんな大事な事を二の次の様に言われた事に対する憤り、悲しみ、屈辱……昔の事ですが、大人になった今でもその感情は心に染み着いています。

公園はおそらくそのまま残り、自分がそこに行かなくなったとしても、子供たちが走り回り、笑顔で遊んでいるその愛くるしい風景はそのままなんだろうなと、思えば思うほど、自分だけが、大好きだったあの公園とそこでの思い出に取り残された気分になりました。環境の変化とその現実に気持ちが追いつかず、引越し先では毎日のように泣いていました。

あの公園を、あんなに大切なみんなとの時間を奪われた、そんな気分でした。

大人になった今は、不思議とその気持ちを受け入れられるようになりました。憤りも悲しみも、自分は余程楽しかった証だな、幸せな時間を過ごしていたんだなと親に感謝をするように……いつしか、感情の変化に教えてもらう事が増え始めました。

12/27/2023, 9:12:19 AM