喜村

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 今日はなんだか、一段と帰り道が冷えて感じた。12月に入って一週間。日本ではところどころで雪も降り始める季節になった。
 制服を身にまとっている一組のカップルは、この寒い日にも関わらず、微妙な距離感を保っていた。
(手、繋ぎたいなぁ……)
 男の子の方が一歩前を歩き、後ろで女の子はそうぼんやりと思っていた。
吐く息が白く宙を舞う。
「そんなにため息ついて、なんだよ」
 男の子は、後方を見ずに問いかける。
「さっきから後ろで、はー、ってため息ついてるだろ」
 怪訝そうな口振りの男の子。しかし女の子は、すぐさま、違う!、と否定する。
「ため息じゃなくて、寒いから、息をはーって手にやってただけ!」
「……そうなの?」
「こっち見てくれないからわかんないんだよ!」
 今度は女の子の方が、泣きそうな声で訴えた。
その声に思わず、男の子は振り返る。
「やっと、こっち見てくれた……」
 女の子は歩みを止めて、男の子を見つめる。男の子もそれにならう。
「私達、付き合って一週間だよね? なのに、どうしてこんなに素っ気ないの?」
 違う!、と、今度は男の子が否定した。
「素っ気ないんじゃなくて、その……恥ずかしい……恥ずかしくて、顔が見れないだけ……」
 最後の方はゴニョゴニョと男の子は言った。
「……そうなの?」
「不安にさせてごめん」
 女の子ははにかんだ。
男の子も女の子も、頬が赤いのは寒いからなのか照れているのかは、本人達にしかわからない。
「じゃあ、仲直り、しよ?」女の子は男の子に手を差しのべる「手を繋いで?」
 今にも雪が降りだしそうな空から、温かな太陽が顔を覗かせ、二人の様子を見守っていた。



【手を繋いで】

12/9/2022, 11:49:11 AM