たろ

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※注意※
やや胸糞展開あり。
倫理感ゼロの頭と治安が悪いモブがいるよ。
見たくない方は、かっ飛ばしてください。

【たった1つの希望】

『もう少しで家族になるんだから、仲良くしよう。』
始まりは、そんな話からで。
『お前が誘ってきたんだ。』
最終的には、自分の所為になっていた。
どうしてこんな事に。
そう思い始めた頃には、引き返せない所まで来てしまったのだと認識していた。
『イヤだイヤだと口では言うが、本当は嫌じゃないんだ。そうでなきゃ、こんな風にならないんだよ。』
嫌気が差している一連の行為も、穢らわしいと感じる手も、拒絶すれば酷い仕打ちが待っているので、黙って受け入れた。
(早く、終われば良いのに。)
羊を数えるように、楽しいことを思い浮かべようとする。
「お前に付き合ってやってんのに、何だその態度は。」
気がそぞろなのを咎めているのであろう、その声にへにゃりと笑い返す。
好きなだけ勝手に遊んで、満足すれば放り出すのだ。それまで待てば、解放される。
ずっと、待てば良いのだ。
(もう、少し。)
少しでも早く満足してもらうために、身を捩って相手が悦ぶように位置を取り直す。

すっかり満足したのか、さっさと身支度をして帰っていく大人。


放り出された身体を温めるべく、ズルズルと浴室に向かって行く。
ようやく解放された事と大切な人に知られなくて済んだ事が、強い安堵感を引き寄せる。
シャワーで水に流してしまえば、全て終わりなのだ。
希望の塊のあなたを汚したくなくて、それだけを頼りに秘密を抱えて生きて行こうと思えた。

まさか、希望そのものだったあなたが、乗り込んでくる事になるとは思わなかった。
しかも、希望そのものとも言えるあなたが手に入るとは、想像もしなかった。

3/2/2024, 1:04:29 PM