『病室』
ふと気がつくと目の前にはベッドがあり女性が横たわっている。周囲は暗く私と目の前の女性以外誰もいなかった。小さな個室の病室にぽつんとベッドが置いてあり、それ以外は申し訳ない程度に小さな床頭台と水の入った吸い飲みが置いてあった。その女性に見覚えがあったため近づいた。近くで見ても呼吸をしているのか分からない。誰だっけと顔を見つめ、もっとよく見ようと顔にかかった髪の毛を横に払った。
「あれ、私に憑いてるお姉さん?」
病室外がから慌ただしい足音と話し声が聞こえてきた。ばたばたと数人が入ってきた。赤い四角いカートの引き出しを弄る人がいれば、電子カルテを弄って指示を出す人、その女性の周りに群がり何かをしている人など様々だった。
誰も私のことには気が付かず、更には私をすり抜けていく始末。私は段々と何が何だか分からず怖くなって逃げようとした。
「家族はどれぐらいで到着できそうですか?」
逃げ出そうとしたら、目の前から白衣を着た人が入ってきた、そこにいる人たちに状況確認したり、指示を出していった。私は驚いて避けようとしたが、相手はすり抜けていった。その時、すり抜ける直前でその人と私は目が合った気がした。
私は廊下に出てどちらが出口だか分からぬまま走った。走って走って永遠に思えるような廊下にも終わりが見えた。角を曲がった先には扉があり、やっとここから逃げられると思う一心で、力いっぱい扉を開けた。眩しくて目を閉じて開けたら、見慣れた天井があった。周りを見回すと、私の部屋でベッドで寝ていたたげだった。
「あれ、何か怖いものを見た気がしたんだけど何だったっけ?」
何か嫌なで不安な気持ちだけが残っていたが、それ以外何も思い出せなかった。何か大切なことだった気がするのに何だったんだろうなと、思い出そうとした。
『うぁ、あぅぁ……』
しかし、背後霊の女性が私を心配したような目で見つめてくるため、考えるとをやめた。
「ごめんね、変な夢を見たみたい。シャワーを浴びたらご飯にしよっか」
今日はお姉さんの好きなもの作るから教えてねと言ったら、バンザイして何をリクエストをしようかとフワフワと漂っていた。今日も背後霊の女性はいなくなることなく存在している。
8/3/2024, 8:15:22 AM