【世界の終わりに君と】
【あの頃の私へ】
[5/3 優しくしないで
[5/5 耳をすませば
[5/25 あの頃の私へ
[6/2 梅雨
続編
登場人物
琴美
葵
昴
響
〈お泊り合宿 その2〉
「ゴメーン遅くなった」店の扉を開け響が入って来た。
「わー、響すっかり都会人だね」
「流石、医者の卵だな」
「よしてくれよ、俺は何も変わらないさ。それより、何の話をしてたんだい」
「幼稚園のお泊り合宿の話」
「あー、あの伝説の話。俺が転校する前の事だな。俺にも聞かせて」
「う〜ん、次はどんな話しがいいかな?」
「虫取り」
「あー、そうだね。あれも面白かったよね。」
「面白くないよ、最悪だったよ」
「へー、どんな話しなの?」
「あれはねー...」
ーー再び16年前ーー
今日は葵の家にお泊りです。
天気がいいので、3人で虫取りに行くことになった。
葵の家から10分程歩いた所に、小さな山があり、そこにはカブトムシやクワガタにセミがいるので、子供たちの人気スポットになっていた。
「ボク、虫はあんまり好きじゃないかも」
「アタシ セミは気持ち悪いから嫌い、コトちゃんは?」
「大好き」
と言ってニヤッと笑う琴美を見て、ふたりは、背筋がゾ〜ッとした。
「あそこにいる」
虫を探し出してすぐに、琴美が木の上にいるカブトムシを見つけ
た。
「あっ、本当だ。でもこのアミで届くかなぁ」
葵は手を伸ばしたが、届きそうもない。
「ボクが木に登ってみるよ」
昴が木に登り出した時、琴美が木を思いっきり蹴った。
ドガーン、木は大きく揺れて昴が木から落ちた。オマケに毛虫が昴の上に落ちてきた。
「ギェ〜‼️ 何するんだよ琴美ちゃん?」
「こうすれば、虫が落ちてくるから」
「ボクも落ちたじゃないか。それに毛虫まで」
「カブトムシは落ちなかったな」
琴美は悪びれもせず、今度は自分で木に登り出した。
「葵、アミ貸して」
葵からアミをもらい、カブトムシではなく別な物を取ろうとしているようだ。
「昴、これあげる」
そう言って昴にアミを渡した。
「何これ?」
「ハチの巣」
「「え〜ハチの巣〜」」
ブーンブーン。どこからかハチが向かってきた。
「逃げろー」
3人は全力で駆け出した。
「昴、池に行って」琴美が叫んだ。
「わかった」
「ねぇコトちゃん、どうして池なの?アタシたちは行かなくていいの?」
「昴から離れれば、ハチは追ってこない」
「え〜〜、昴くんハチの巣を捨ててー」
昴はハチの巣を草むらに放り投げた。その時運悪く足を滑らせて池に落ちてしまった。
「昴くん大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ、酷いよ琴美ちゃん。ボクもうお家帰る」
その時、葵のお母さんが迎えにきた。
「みんな、そろそろ帰ってご飯よ。今日はハンバーグよ...??
昴くんどうしたの。びしょ濡れじゃないの、お風呂先にしましょうね」
ーーー現 在ーーー
「はははっ、そんな事があったんだ。さすが、琴美だな」
「昔の事よ」
「そのコトちゃんが今は、薬剤師になろうとしてるんだものね。不思議よね」
「俺はあの時思ったんだ
“世界の終わりに琴美とだけは絶対に居たくない”ってな」
6/8/2024, 10:17:19 AM