唖然というか、戸惑っているというか。
夜の、誰もいない浜辺にたたずむ同僚の様子を説明するならそんなところだろう。海を目の前にしてどういう反応をとればいいのか迷って、迷う以前に動揺してフリーズしたそれ。何事も黙々とこなすか、あるいは狙いすましたような天然で煙にまくような男が、軽く緑の瞳を見開いて、浜辺に打ち寄せる海を見つめている。……おかしいというか、面白いというか。こいつでもそんな顔をするのかと意外さもあって、どんな声をかけていいのかこちらも迷ってしまった。
そんな降谷の逡巡の間を縫うように、子供たちの笑い声が聞こえてくる。その歓声にようやく我に返ったらしい織田作之助がそっとを目蓋を上下させた。ゆっくりと胸板を上下させて深呼吸して、そこで遅ればせながら自分を凝視している同僚に気づいたようで、今度はいつもの調子でまばたきをして口を開いてくる。
「……降谷さん、なにか?」
「あぁ……、いや、なんでもない」
8/15/2023, 10:43:20 AM