長い洞窟を駆ける。
記憶のランタンを頼りに真っ暗な「空虚」の、
奥の奥へ進む。
ランタンは無造作で本当にかつて僕が灯したものなのか不安になる時がある。
この道で合っているのか、
自分が一度訪れたところで迷子になるというのは、
新鮮なことだ。
いずれ忘れてしまう。
今思い出そうとしているのも何かの縁。
もう一度来たときは迷わないように、
今しっかり頭に焼き付けなければ。
長い洞窟を駆ける。
だんだんと確かになっていく、
自分の記憶。
メモリーカードはまだ生きていた。
間に合ったんだ。
ランタンのこの灯火を1個でも絶やして入れば、
このまま迷い続けて忘れていくところだった。
あの時は無駄かもしれないと思っていたことが、
今では助けにすらなっている。
いずれ認められる愚行のように。
思い出というガラクタは埃が溜まれば宝物になる。
そろそろ出口が見えてきた。
空虚の出口が見えてきた。
長い洞窟だった。
そうだ。この景色だ。
懐かしい、面影がある。
記憶のランタンは弱々しい光から、
より一層強いイルミネーションになって、
あの思い出をより鮮明に照らす。
こうやって時々見に行きたくなる。
過去に浸りたいワガママもあるけれど。
今見てる景色という思い出を、
色褪せたランタンをもう一度焚き付けに行くんだ。
出口はいずれ閉まるけど、
そこまでの道のりを記憶のランタンがずっと示してくれる。
19[記憶のランタン]
11/18/2025, 12:30:47 PM