その夜は暑かった。クーラーをかけたところで寝苦しく、なかなか寝付けない。
タオルケットをクシャクシャにしながら、ゴロゴロと寝返りをうつ。
明日も仕事だ、早く眠らなければ。思えば思うほどに、眠れなくなっていく気がする。
「眠れないなあ……困るなあ……」
現状を口に出したところで、変わるわけもなく。
私は寝ようとすることに疲れて、上体を起こした。
ふと、カーテンの隙間から月明かりが差し込んでいることに気づいた。
何となく心惹かれて、ベッドから立ち上がり、カーテンを少し開けて、夜空を見上げてみる。
そこにはまん丸の月があった。ちょうど雲から出てきたところのようで、濃紺の夜空に白く綺麗に浮かび上がっていた。
私はしばらく、ボーっと月を眺めた。
夜空の中で一番大きく輝いているのに、その光はなんだか優しい感じがする。
眠れなくて焦っていた気持ちが、だんだんと落ち着いていく。
一度大きく深呼吸をして、カーテンを閉め、ベッドに戻った。
カーテンの向こうの月明かりをまぶたの内側に思い出す。
次第に意識はふわふわと曖昧になって、夜に溶けていった。
ピピピピピピピ……
アラームが鳴る。目を開けて起き上がる。
カーテンを開けば、眩しい朝が私を迎えた。
10/11/2024, 1:47:44 PM