糸井

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「僕の事は忘れてね」

ふんわりと私の頭に手を添えて、柔らかい声で笑いながら彼が私に言った、最後の言葉。それを言った瞬間から永遠に彼はこの世界から失われてしまった。私への感謝だとか今までの事とかも色々言われたけど、最後の言葉以前は混乱に塗りつぶされてしまった。

でも、あの瞬間の苦しみを覆い隠す綺麗な表情も暖かな手も鮮明で、これまではもちろんこれからも忘れる事は無いだろう。というか、絶対に忘れてあげないのだ。脳裏に焼き付けた貴方の存在証明を。

『脳裏』

11/10/2024, 6:29:12 AM