『踊るように』2023.09.07
彼の歌声は、まるで踊っているようだった。
ただ、歌っているだけではない。抑揚の付け方も表現力も、伸ばしたり跳ねたり。さながらそれは、一つのダンスのよう。
彼の歌声には、そう思わせる力がある。
逆に、彼のダンスからは歌声が聴こえる。
彼の全身が楽器のように音色を奏でていると錯覚させる。
それだけ、彼の歌やダンスは不思議で魅力的なのだ。
彼が歌い踊るたびに、観客の視線が動く。
自分の一挙一動に注目が集まる。
それは舞台人なら誰しもが快感に感じることだ。
実際に、彼もそれが嬉しいと言っていたし、自分もそう思っている。
発声一つ、手の伸ばし方一つで物語の世界に連れ込むことが出来ればこっちのものだ。
今も彼は歌声を踊らせている。
例えるならそれは、パ・ドゥ・シャ、フェッテ。
間近で彼の歌声を聴けることの喜びを噛み締めながら、自分も歌声を踊らせた。
9/7/2023, 12:09:18 PM